女王の帰還
199X年。洋楽シーンはハウスミュージックに席巻されていた。
…あ、なんか「北斗の拳」のオープニングみたいだ。
ようは電子音楽で、「どっどっどっど」っていうリズムの繰り返しで、ちょっとアングラっぽくてクラブで掛るような曲。広義のダンスミュージック?そっち方面詳しくないけど、なんかそんなのが流行ってました。覚えてるのだとシェイメンとかプロデジーとか。
んと、だいたいこんな感じ。
当時、フジテレビで夜中に「BEAT UK」っていう、イギリスのヒットチャートを紹介する番組を週1でやっていたんだけど(水曜とか木曜とか、なんか変な曜日だったような気がする)、そこでチャートにあがって来るのもそんな感じの曲ばっかりでした。
wikiによれば「BEAT UK」で紹介していたのは、「イギリスのヴァージン・メガストアーズにおけるシングルチャートトップ20」だったそうです。
記憶では、20位から上へ順々に曲のPVの一部を紹介して行って、途中にミニ特集のコーナーがあったりアルバムチャートトップ5の紹介があったりして、最後にその週のシングル1位の曲だけが、フルPV流れてスタッフロールで終わる感じの番組でした。
変なうるさい司会がいなくて曲やアーティストの解説などは全部字幕、楽曲だけが淡々と紹介されて行くので、なんというか、スタイリッシュな邪魔にならない音楽番組でした。
実は当時結婚していた旦那さんがそういうダンスミュージック系のいち早い情報を必要としていた職業(どんな職業や!)だったので毎週録画して観ていたのですが、そんなわけで掛かる曲は私にはほぼ興味のないジャンル、だったのです、そう1991年1月のあの週までは。
「どっどっどっど」のリズムの嵐がぴたりとやんで、ふいに一陣の風が吹いたのです。
私も旦那さんも6分30秒間茫然。
ちょっ!ちょっと!ままま巻きもどしていいっ?今の何っ!
「クイーンだね」
「うん、クイーンだ」
「初登場だよね」
「うん、先週はいなかった」
「…1位だよね?」
「BEAT UK」では、ランクに初登場した曲には「NEW!」マークが燦然と輝く。は、初登場1位だ…
ハウスミュージック全盛のチャートの頂点に突如として降臨した、他のヒット曲とはまったく異質の、いや異次元の音楽。
それが、クイーンのニューアルバム「イニュエンドウ」からの先行シングル「イニュエンドウ」であると気がつくのに、さして時間はいりませんでした。
う、うわぁ。クイーンだ、クイーンが、
還って来た。
私の率直な感想は、それでした。
その前のアルバム「ザ・ミラクル」がわりとハードロック路線というか、男らしい感じというか、力強いというか、そういうアルバムだったので、この絢爛たる「イニュエンドウ」の感じは…ああ、まさにご帰還。
おかえりクイーン。待ってたよ!これを待ってたんだよ!
仮に、私がそれまでクイーンのファンでなかったとしても、ぴこぴこちゃかちゃかのダンスミュージックが跋扈するヒットチャートの1位に、ひゅ~~~~「わーんつーすりーふぉー」でシングル「イニュエンドウ」が降臨したその瞬間、女王陛下の前にひれ伏したと思う。
それくらい、異質で豪華で不思議で不気味でわけわかんなくて美しくて、とにかく凄いインパクトでした。
もちろん、その時点でフレディの体調のことなんか、なんにも知りません。
だから、「ちょ、ちょっと、90年代のクイーンって凄くない?どうしよう、楽しみ過ぎる!」と、アルバム「イニュエンドウ」の発売日を、文字通り指折り数えて待っていました。
はっきり言えば、その頃日本におけるクイーンの人気はそれほどのものではありませんでした。あまり話題にもならなくなっていたし。周囲にクイーン好きなんてひとりもいなかった。
でもそれでもちっとも構わなかった。人がなんと思おうと、待って待ってようやく買ったアルバム「イニュエンドウ」は本当に素晴らしかった(余談。「イニュエンドウ」は私が生まれて初めて購入したCDです。「ザ・ミラクル」まではレコードとCDと両方出ていたのでレコードを買ってたんだけど、「イニュエンドウ」からCD販売のみになったから、なし崩しに)。
「ホット・スペース」あたりからのフレディの喉声が時として苦手だったので、声の感じが元のスタイルに戻ってるのも嬉しかったなぁ。
だから私にとってアルバム「イニュエンドウ」は、クイーンが還って来てくれたアルバム。嬉しくて嬉しくて、わくわくしながら聴いたアルバム。
さあ、これからクイーンはますます凄くなるぞ!と期待に胸を膨らませたアルバムなんです。
だってほら、フレディも「The Show Must Go On」と言っている。
たとえ結果的に、「これから」は来なかったとしても。
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