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2012年12月23日 (日)

観られなかった人のために。その14

14

前回を「番外編」にしちゃったので迷ったけど「その14」です。

2012年11月21・29日 NHK BSプレミアム放送

「世紀を刻んだ歌2 ボヘミアン・ラプソディ殺人事件」

http://www.nhk.or.jp/archives/premium/past/201211-3.html

元々2002年に放送されたものを「プレミアム・アーカイブス」の枠で再放送したものです。
確か2007年くらいにも一度再放送されているので、5年周期くらいで帰ってくる彗星のような番組ですね(笑)。

イギリスで行われた「1000年のベストソング」投票で1位に輝いた名曲「ボヘミアン・ラプソディ」。
なぜ、この曲がイギリス人にかくも愛されているのか、楽曲内で歌われている奇妙な殺人事件をふたりの刑事が捜査して行く、というドラマ仕立てで、その秘密を探るというコンセプトです。
…この捜査官の演技がちょっとクサくて、それがまたNHKらしい泥臭さを醸し出しています(注・誉めている)。

ちなみに、その「1000年のベストソング」の映像はこちら。1999年放送。

http://www.youtube.com/watch?v=_hCfSAk-gHk

たぶん、番組の企画自体、本当に「なぜボヘミアン・ラプソディ?」というところから始まったんじゃないかな、という気がします。
ビートルズでもエルビスでもなく、なぜクイーン?と。

本気になった時のNHKの取材力はすさまじいです。

フレディママのジャー・バルサラさんやクイーンの前身バンド、スマイルのボーカルのティム・スタッフェルさんなど、ファンも思わずうなるような方々からコメントを取り付けています。

そしてそれだけの取材力(&取材費)がありながら、クイーンのメンバー、ロジャー・テイラーとブライアン・メイは、出演していません。

それはつまり、おそらく、ですが、ロジャーとブライアンは当事者だから。発信する(した)側だったから、だと思います。

この番組はあくまで、「ボヘミアン・ラプソディ」がイギリスの人々からどう「受け止められたのか」という視点で製作された番組なのです。

番組の章立ては以下の通り。

●捜査ファイル1 超インテリバンド・クイーン

         "Queen" The Super Intellectual Band

 特別捜査ファイル1 70年代英国ロック事情 70's U.K.Rock

 特別捜査ファイル2 多重録音とは What's Over-Dubbing

●捜査ファイル2 ボヘミアン・ラプソディ180録音の謎
         The 180-Track Recording Mystery

●捜査ファイル3 ボヘミアン・ラプソディと70年代イギリス病
         Bohemian Rhapsody And Black Britain In 70's

●捜査ファイル4 永遠のロック国歌
         The Everlasting Rock Anthem

●捜査ファイル5 フレディはボヘミアン?
         Is Freddie Mercury a Bohemian?

この章立てだけでもだいたいの内容は判ると思うのですが、クイーンというバンドの説明から始まって、楽曲「ボヘミアン・ラプソディ」が生まれた経過やヒットした背景などが、クイーンをまったく知らない方にも判りやすく紹介されています。

特に、フレディの個人的な内面の葛藤を歌った曲が、オイルショックから財政悪化の真っ只中にあった1975年のイギリスの庶民たちに、なぜ受け入れられたのか、という視点は面白かったです。

何かを打ち破りたくて、どこかに逃げ出したくて、何かを拒絶したくて、でも、別にどっちでもいいけどね、という、暗い、明るさ。芝居がかった皮肉なユーモア。

そして、聴き手によってどんな受け取り方でもできる、曖昧さ。笑っているようにも、哀しんでいるようにも、怒っているようにも、ただ茶化しているようにも受け取れる。

それはまるで、モナリザのように。

捜査官ふたりは結局、「ボヘミアン・ラプソディ殺人事件」の謎を解明することは出来なかったけれど、解明できないことこそが、この曲の魅力。1000年愛される理由。

凛々さんが初めてこの番組を観た時、ラストで何人もの人たちが「ボヘミアン・ラプソディ」をリップシンクで次々と歌い継ぐシーンで、ぼろぼろと泣いてしまったのですが、今回もやっぱり同じ反応をしてしまいました。

別に哀しい光景でもなんでもないのに。

なお、「捜査ファイル4 永遠のロック国歌」で紹介されたリバプールの大学院生、ルース・ドックレーさんの卒業論文「Queen -  Complex Songs & Anthems」は、なんと2005年に日本で「国歌になったクイーン」というタイトルで書籍出版されました。

イギリスの一学生にすぎない彼女の論文が遠い日本で翻訳され、出版されたのも凄いことだと思うのですが、それは2002年に放送されたこの番組がきっかけだったのは間違いないでしょうね(プラス、2005年のクイーンブームの恩恵)。

現在は絶版になっていますが、まだ中古で手に入れることは可能です。

 ☆    ☆

で、以下は余談なんですが、番組の中で言われていた、「1975年のイギリスと、今(というのは放送当時の2002年)の日本の社会情勢は、似ている」という説。

1975年のイギリスに「ボヘミアン・ラプソディ」が生まれたように、バブルが崩壊して不況と社会不安にあえぐ日本に、人々を励ますアンセム(聖歌、国歌、ある集団の象徴的な歌)は生まれただろうか、と、ふと考えたんですよ。

まさかね、そんなのないよね、と思ってしばらく忘れてたんですが、先日ふとしたはずみに思い出したニュースがあるんです。

http://www.oricon.co.jp/news/music/2018444/full/

1982年6月から2012年3月までの30年間を通じて、最も著作物使用料の分配額が多かった楽曲は、「世界に一つだけの花」。

この曲が発表されたのは2002年なので、実際には30年の内の最後の10年だけで、1位になっているわけです。

あ、時期的に、合っている。

経済大国、技術大国の座から滑り落ちて、長引く不況のどん底で、「ナンバー1じゃなくても、ひとりひとりが特別なオンリー1だよ」というこの曲が、日本人の心を慰めたのかもしれない。
昨年の未曾有の大災害の後も、この曲は確かに人々の応援歌として、歌い継がれていた。

そして邦楽をまったくと言っていいほど聴かない凛々さんですら、この曲を知っている、サビの部分くらいは歌えてしまう、という事実!

個人的な好き、嫌いは抜きにして、そういえば「世界に一つだけの花」は、日本のアンセム、と言える曲かもしれないな、と、思いつきました。

だから、結局人間は、音楽を必要としているのですね。生き続けるために。


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