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2015年5月 5日 (火)

柘榴の木

Proserpine

長生きできるとは思わないし、しようとも思ってない。70まで生きようなんて思わないよ。その前にこの世を去ってると思う。そしてどこかで生まれ変わってる……ザクロの木を育ててるんだろう。

Freddie Mercury

正直言って、「長生きしない(あるいは、したくない)」という「若くして死ぬ」幻想というのは、ある程度までの若い人にはよくある自意識だと、私は思う。
「若くして死ぬ」という悲劇性に酔っているのだが、多くの場合、実際にはその人はいずれ、自分は悲劇の主人公でもなんでもない、平均的な、あまりに普通の人間であることに気付くことになる。遅いか早いかの違いだけで。

しかしフレディは、まだ海のものとも山のものともつかない20代の若き日に「『スター』ではなく、『伝説』になりたい(I won't be a rock star. I will be a legend.)」と言い放ったかのフレディ・マーキュリーは、「『フレディ・マーキュリーたる伝説』の人生」を完璧に全うした。

凄まじいまでの意思の力で、そのために不必要なものを切り捨てて、後も見なかった。

自分が、アフリカに生まれてインドで教育を受けたパールシーの出身だということも生前自分からは口にしなかったし、インドでの話などを話題にされるといつも不機嫌になった。スターになった後、たとえば学生時代の旧友などが訪ねて来ても、会おうとしなかったという。

それでも、彼の言葉の端々に、彼を育んだものの片鱗が時折顔を出す。

以前、確かクリスマスの話題を記事にした時に、「フレディの内面を一番理解できるのは、もしかしたらこの特有の「あいまいな宗教観」を持つ日本人なのかもしれない」と書いたが、

http://yuuki-rinrin.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/post-36b4.html

冒頭の言葉の「どこかで生まれ変わっている」というのも、我々日本人には当たり前のことのように感じてつい見逃しそうだけれど、輪廻転生は、西欧諸国の文化的価値観の基準であるキリスト教には本来ない概念。

もちろん、何もフレディも本気でそう信じていたわけではなくて、たぶん上の空にインタビューを受けながら思いつきを口にしたのだろうとは思う。
だからこそ、そこに彼の中でひっそりとその下生えとなっている部分が顔を出したのだろう。

なぜ、その人は柘榴(ザクロ)を育てているのか。

ザクロは中央アジアから西アジアが原産と言われる果実で、今では世界中で栽培されているが、トルコから中東にかけてが一大産地になっている。
日本には、中東から中国を経て、9~10世紀に伝わっている。

鬼子母神が手に持つ「吉祥果」は、釈迦の教えがインドから中国に伝わる過程でザクロに変わった。

元々はヨルダン川沿岸の地方宗教に過ぎなかった原始キリスト教において、エデンの園でアダムとイブが禁を破って食べた「知恵の樹の果実」は、このザクロだったという説もある。

プロセルピナは冥界でザクロを食べてしまったがために冥府の者となり、一年の半分を冥界で、残りの半分を地上で暮らすことになった、ローマの春の女神。

文化が、信仰が、その発祥の地である西アジアから東へ、西へと伝播するのと同じルートで、世界に広がった古く謎めいた、異国の果実。

フレディは意識していたのだろうか。

自分からは滅多に口にしなかった自分のルーツ、ペルシャの暑く乾いた風を。それに揺れる果樹を。一挙一動を世界中から注目される人生から、いつの日か降りて。

華やかなステージから誰も知らないどこかの国に生まれ変わって。
そしてひっそりとザクロの樹を育てているのだろう、と。

日本のスーパーの店頭などに並ぶ見事な大振りのザクロの実は、イラン産のものが多いとのこと。
硬く厚い鎧のような果皮に包まれた、瑞々しい小さな真紅のガーネットの輝き。

「どこかで…」

きっとどこかで、あの人はそれを見つめているのだろう。誰も知らないどこかの丘で。

Proserpina



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