追悼、マイケル・ジャクソン
私自身が膠原病なので、膠原病関連のニュースには敏感なはずなのだが、マイケル・ジャクソンが膠原病の一種である全身性エリテマトーデスだったというのはつい昨日初めて知った。
と同時に、あらゆることに合点がいった。マスコミに「奇行」と言われたほとんどが、別に奇行でもなんでもないことに。
極端に少食だったのは、全身性エリテマトーデス治療には必須のステロイドの副作用によって太ることを恐れたのだろうし、日光過敏症になる(日に当たると皮膚が赤くはれ上がる)のでサングラスにマスク、帽子に長袖に日傘はこの病気では当たり前のこと。
血管炎や関節炎を併発していれば、その痛みは半端じゃないのであれだけの踊りをこなすにはかなり強い消炎鎮痛剤を使っていたのだろうということも、容易に想像出来る。
…痛い、って言っても寝てれば治るとか、そういう種類の痛みじゃない。治らない痛み。一生、痛い。鎮痛剤依存というより、鎮痛剤がないと普通の生活すら出来ない。
全身性の免疫疾患なのでかなり疲れやすかったはずだし、場合によっては肺や腎臓、心臓などが悪くなることもある。直接の死因は7月1日現在まだ公式には不明だが、心臓発作らしい、というのもある程度納得出来るのだ。
その上、彼は尋常性白斑でもあったそうなので、白塗り顔は皮膚保護のクリーム(フランス製のなんとかいうクリームで、病院でも処方される)を塗っていたからだろうし、それだけだとのっぺりとした顔になってしまうのでアイメイクや口紅を塗るのも別に不思議ではない。
白斑の症状はスリラーの頃からあったようで初めは褐色に塗っていたのが、白斑があまりに広範囲に広がっていったために、広い部分に合わせる形で白塗りになったのだとか。現在色素は爪の先くらいしか残っていなかったそうで、メラニン色素がないということは皮膚がんにもなりやすく、紫外線を避けることはこれもまた必須。
全身性エリテマトーデスも尋常性白斑も、ともに自己免疫疾患である。
病気と直接関係ないことといえば鼻とあごの整形くらいだけど、それだって別に「奇行」というほどのことじゃないでしょう。
最初の鼻の整形のきっかけはステージ上での鼻の骨折だったそうだし。
そして何より驚いたことに、マイケル自身は自分が全身性エリテマトーデスと尋常性白斑を罹患していることを、別に隠していなかった。公表していた。
例の冤罪裁判の時には、検察がマイケルの尋常性白斑を証拠として認めており、つまりこれは公式に、法的に、その病気であることが事実と認められていたということ。
にもかかわらず、内外のマスコミはそのことには触れず、ただ面白おかしく「奇行」(に見える)部分だけをことさら取り出して彼をあざ笑った。
これは意識的な悪意だ。
26日の夜7時からフジテレビで放送した追悼番組「緊急特別番組 マイケル・ジャクソンはなぜ死んだのか?」は本当に酷かった。
「マイケルファン」と臆面もなく公言した司会の小倉智昭氏は、はっきりと「肌を脱色した」と言った。白人になりたかったのかも、などとも。
公共の電波上で発言する者としては、不見識としか言いようがない。膠原病や尋常性白斑の患者団体が正式に抗議しておかしくない、偏見に満ちた番組であった。猛省を求めたい。
マイケル本人がまた、自分に関する「言い訳」をしない人だった。悪意に満ちた、間違った報道をいちいち訴えることだって出来ただろうに。
彼はただ黙って、素晴らしい作品を生み出し、パフォーマンスすることだけに打ち込んだ。シャイで心優しいマイケル。
以前、「『スリラー』の売り上げがプレスリーもビートルズも抜いて世界一になった瞬間、一夜にして『ある種の人たち』が敵になった」という話を聞いて、いや、いくらなんでもそれは考えすぎじゃないのか?と思ったのだが、こうなると信憑性を帯びて来る。
人種差別は、我々のん気な日本人には想像も及ばない、「闇」なのだ。
無言で戦い続けた彼を、もう誰も傷つけることは出来ない。
マイケル・ジャクソンの魂の安らかならんことを祈る。
悪意のある人たちがどんなに彼を貶めようとしようとも、彼の生み出した芸術は愛され続ける。これまでも、そしてこれからも。永遠に。
2009年7月4日追記
お手数ですが、上記の記事につきましてこちらの記事「みなさまへのお願い」もご参照いただければと思います。申し訳ございませんが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。
全身性エリテマトーデスに特徴的な、蝶形紅斑と思われる写真です。昨夜、友人が見つけて教えてくれました。
元の写真はこちらにあります。
http://popspiracy.blogspot.com/2007/06/michael-jacksons-skin-disease.html
上記の2007年6月26日の記事本文の後半部分に、
「マイケルが、全身性エリテマトーデスにもまた悩んでいることを示唆する人もあります。彼らは、マイケルの顔が赤く見えるスリラー時代の写真は、典型的な全身性エリテマトーデスの発疹(訳注:蝶形紅斑)であると指摘しています。」
と書かれていますね。和訳がへたくそなのはごめんなさい。
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